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中小企業が押さえるべき電子帳簿保存法の対応方法と実務ポイント

電子帳簿保存法とは?中小企業にも関係あるの?

電子帳簿保存法は、帳簿や請求書などの書類を電子データで保存するルールを定めた法律です。「うちは小さな会社だから関係ない」と思うかもしれませんが、法人・個人を問わず、すべての事業者が対象です。

特に2024年1月からは、電子取引データを電子のまま保存することが義務化されました。

中小企業の日常を考えると、取引先からメールで届く請求書、クラウドサインなどの電子契約データ、各種SaaS・クラウドサービスの利用明細、Amazonや楽天で購入した備品の領収書など、電子取引は想像以上に多いはずです。

3つの保存区分を整理する

区分内容対応義務中小企業での具体例
電子帳簿等保存会計ソフトで作った帳簿任意freeeやマネーフォワードの仕訳データ
スキャナ保存紙の領収書をスキャン任意仕入先から届く紙の請求書・納品書
電子取引データ保存メール等の請求書義務取引先からのメール請求書、EDI取引データ

義務なのは3番目の「電子取引データ保存」だけですが、中小企業では1番目と2番目にも積極的に取り組む価値があります。特にスキャナ保存は、紙の証憑が多い会社ほど保管コスト削減と検索性向上の効果が大きく、経理業務の効率化に直結します。

売上規模で変わる対応レベル

売上5,000万円以下の場合

検索機能の確保が免除されます。やるべきことはシンプルで、電子取引データを改ざんできない状態で保存し、税務調査時にダウンロードの求めに応じられるようにしておけば問題ありません。

売上5,000万円超の場合

多くの中小企業はこちらに該当するでしょう。検索機能の確保が求められます。具体的には、日付・金額・取引先の3つの項目で検索できる状態を整える必要があります。

対応方法は大きく2つです。

  1. 会計ソフト・文書管理ソフトの検索機能を使う — 対応ソフトに保存すれば自動的に要件を満たせる
  2. ファイル名に規則をつけて管理する — 例:20260221_株式会社○○_55000円.pdf のようにファイル名で検索できるようにする

どちらを選ぶかは会社の規模やIT環境に応じて判断しますが、取引量が多い会社は1の方が運用負荷が低く現実的です。

中小企業でよくある電子取引と保存のコツ

受け取る電子取引データ

  • 取引先からのメール請求書・見積書 — PDF添付やメール本文に記載されるケース
  • EDI取引データ — 受発注システム経由の取引データ
  • クラウドサービスの利用明細 — SaaS利用料、クラウドストレージ、通信費の明細
  • ECサイトでの購入履歴 — 備品やオフィス用品の領収書
  • 経費精算システムの電子レシート — 交通系ICやキャッシュレス決済の利用明細
  • 電子契約サービスのデータ — クラウドサインやDocuSignで締結した契約書

発行する電子取引データ

自社が発行する電子請求書や電子領収書も保存対象です。見落としやすいので注意してください。

保存期間

法人は原則7年間(欠損金の繰越控除を利用する場合は10年間)。保存期間中は検索・閲覧できる状態を維持する必要があります。

社内規程の整備が最初の一歩

中小企業が電子帳簿保存法に対応するうえで、まず取り組むべきは事務処理規程(社内規程)の策定です。

規程に盛り込む主な項目は以下のとおりです。

  • 電子取引データの保存責任者と保存場所
  • ファイル名の命名ルール
  • バックアップの方法と頻度
  • 訂正・削除を行う場合の手続き
  • 定期的な運用チェックの方法

国税庁のホームページにサンプルが公開されています。自社の実態に合わせてカスタマイズし、社内で共有・周知することが重要です。

経理担当者への周知・教育を忘れずに

規程を作っても、実際に運用する経理担当者が理解していなければ意味がありません。

  • 導入時の研修 — 法律の概要、社内規程の内容、具体的な保存手順を説明する場を設ける
  • マニュアルの整備 — 画面キャプチャ付きの操作マニュアルがあると、担当者が変わっても運用が途切れない
  • 定期的な振り返り — 四半期に1回程度、運用状況を確認し、ルールが形骸化していないかチェックする

経理が属人化している会社ほど、ルールの明文化と共有が重要です。電子帳簿保存法への対応を機に、経理業務全体の標準化を進めるのも有効なアプローチです。

会計ソフトを使っていれば大半は対応済み

freee、マネーフォワード、弥生オンラインなどのクラウド会計ソフトを利用していれば、電子帳簿等保存とスキャナ保存の要件は概ねクリアできます。電子取引データの保存機能も備わっているソフトが増えており、追加コストなしで対応できるケースも多いです。

ただし、会計ソフトに取り込まれない電子取引データ(例えばチャットツール上の取引連絡や、直接メールで受け取る請求書PDF)は別途保存ルールを決める必要があります。「会計ソフトに入っているから大丈夫」と油断せず、全ての電子取引データが漏れなく保存されているか確認してください。

当事務所のサポート

当事務所では、中小企業の経理体制構築の一環として、電子帳簿保存法の対応チェック、社内規程の策定支援、会計ソフトの初期設定サポートを行っています。自社の売上規模や取引形態に合った対応方針を一緒に整理しませんか。お気軽にご相談ください。

経理体制、このままで大丈夫ですか?

この記事を書いた人

小松 啓

小松 啓

公認会計士・税理士

大分県出身。有限責任あずさ監査法人で上場企業の監査を担当後、フロンティア・マネジメント株式会社で経営コンサルティング、投資ファンドでの投資実行を経て独立。会社のステージに合わせた経理体制の構築から、決算・税務申告まで一貫してサポートします。

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